東京地方裁判所 平成2年(特わ)2090号 判決 1991年3月29日
本店所在地
東京都渋谷区上原一丁目三五番九号
株式会社明宝
(右代表者代表取締役 平山文雄)
本籍
東京都世田谷区松原五丁目二〇三番地
住居
同都渋谷区上原一丁目二二番一一号
第二代々木上原シティハウス二〇一
会社役員
平山文雄
昭和二一年三月八日生
右の者らに対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は、次のとおり判決する。
検察官 渡辺咲子 出席
主文
被告人株式会社明宝を罰金一億二〇〇〇万円に、
被告人平山文雄を懲役一年八月にそれぞれ処する。
理由
(犯罪事実)
被告会社株式会社明宝は、本店を東京都渋谷区上原一丁目三五番九号(昭和六三年九月五日以前は同都渋谷区恵比寿西一丁目一〇番一〇号、同六二年一二月二六日以前は同都目黒区祐天寺二丁目八番一五号、同年三月三一日以前は同都渋谷区上原一丁目三五番九号)に置き、不動産の売買及び仲介等を目的とする資本金二〇〇〇万円(昭和六二年八月二二日以前は一六〇〇万円、同年七月二九日以前は四〇〇万円)の株式会社であり、被告人平山文雄は、被告会社の代表取締役としてその業務全般を統括しているものであるが、被告人平山は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上の一部を除外し、架空の支払手数料を計上するなどの方法により所得を秘匿した上、
第一 昭和六〇年四月一日から同六一年三月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が六億四一四六万七三二二円(別紙1の修正損益計算書参照)、課税土地譲渡利益金額が六億三六四六万五〇〇〇円であつたのにかかわらず、同六一年五月三一日東京都渋谷区宇田川町一番三号所轄渋谷税務署において、同署長に対し、所得金額が五億二三八二万六八六五円、課税土地譲渡利益金額が六億九七九一万六〇〇〇円であり、これに対する法人税額が三億六四二六万円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額四億二九〇万七三〇〇円と右申告税額との差額三八六四万七三〇〇円(別紙3の(1)の脱税額計算書参照)を免れ
第二 昭和六一年四月一日から同六二年三月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一三億五三二四万七七九円(別紙2の修正損益計算書参照)、課税土地譲渡利益金額が一三億五八七〇万四〇〇〇円であつたのにかかわらず、同六二年六月一日、東京都目黒区中目黒五丁目二七番一六号所轄目黒税務署において、同署長に対し、所得金額が四億七九二四万八三八四円、課税土地譲渡利益金額が九億九五七九万円であり、これに対する法人税額が三億九五二四万一三〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額八億四六二六万二七〇〇円と右申告税額との差額四億五一〇二万一四〇〇円(別紙3の(2)の脱税額計算書参照)を免れ
たものである。
(証拠)
判示全部の事実について
一 被告人平山の当公判廷における供述
一 被告人平山の検察官に対する供述調書(平成二年一二月一二日付《三通》、同月一五日付、同月一八日付《本文九枚綴りのもの》、同月一九日付、同月二一日付、同月二三日付、)
一 大蔵事務官水野章次作成の支払手数料調査書、受取利息調査書、未払事業税認定損調査書、課税土地譲渡利益金額調査書
一 目黒税務署長関根浩作成の証拠品提出書
一 大蔵事務官早川正作成の領置てん末書
一 登記官作成の登記簿謄本及び閉鎖登記簿謄本
判示第一の事実について
一 被告人平山の検察官に対する供述調書(平成二年一二月一八日日付《本文四枚綴りのもの》)
一 検察事務官栃谷博作成の報告書
一 押収してある確定申告書一袋(平成三年押第三三号の1)
判示第二の事実について
一 被告人平山の検察官に対する供述調書(平成二年一二月一六日付《二通》、同月一八日付《本文七枚綴りのもの》、同月一七日付)
一 大蔵事務官水野章次作成の不動産売上高調査書、受取手数料調査書、不動産仕入高調査書、期末不動産棚卸高調査書、支払謝礼金調査書、支払違約金調査書、広告宣伝費調査書、港区南青山及び西麻布の物件販売調査書
一 検察事務官佐藤純夫作成の報告書(二通)
一 押収してある確定申告書一袋(平成三年押第三三号の2)
(適用法令)
罰条 被告会社関係
判示各行為につき法人税法一六四条一項、一五九条一項(さらに情状により各一五九条二項を適用)
被告人平山関係
判示各行為につき法人税法一五九条一項(各懲役刑選択)
併合罪加重 被告会社関係
刑法四五条前段、四八条二項
被告人平山関係
刑法四五条前段、四七条本文、一〇条
(量刑理由)
本件は、脱税額が合計で四億九千万円近くにのぼり、しかもその九割以上がいまだ納められていない状態にあり、脱税のための不正工作も悪質であり、犯情は悪い。しかし、ほ脱率は、昭和六一年三月期分は一〇パーセント未満で、昭和六二年三月期分も五三パーセントにとどまつていることや、脱税工作を行つた不動産取引の件数もそれほど多くないことなど、酌むべき事情もある。
以上の各事情その他諸般の事情を考慮し、主文のとおり量刑した。
よつて、主文のとおり判決する。
(裁判官 松浦繁)
別紙1
修正損益計算書
<省略>
別紙2
修正損益計算書
<省略>
別紙2
修正損益計算書
<省略>
別紙3
脱税額計算書
(1) 自 昭和60年4月1日
至 昭和61年3月31日
<省略>
(2) 自 昭和61年4月1日
至 昭和62年3月31日
<省略>